2012年10月9日火曜日

途上国×技術×キャリア その3 - 原体験-

前回の続き。
今回は、初めてのケニア滞在について書いていく。


3. ケニア滞在(1回目) 20109-20113
初めての途上国であるケニア。 約半年間のケニア滞在で私が実行した大きな活動は2つある。

3.1 ソーラーランタン調査 20109- 201012
適正技術が実際に現場でどのように使用されているのかを確かめる為に、Kopernikから西ケニアの非電化地域に導入されたSolar lanternの調査をする事が一つ目の活動である。
詳しくはこちらのブログ(Life in Kenya)に譲るとして、実際に現場で適正技術を使用している人々へのインタビュー、村人との共同生活を通じて、適正技術の可能性と同時に難しさを垣間見る事ができた。




可能性:
長期間非電化地域の村に滞在してみて、意外にも裕福な人々が村に広大な敷地を有して住んでいる事が分かった。しかしながら、インフラが欠如しているという状況は他の村人と状況が同じ為、平均的な村人と比較して生活の質(電気、ガスがない生活)に大きな解離がなかったと実感した。この為、このような革新的な技術がビジネスとして村に普及する可能性はあると思った。しかし、現状ではその流通もが整っていない為、それはできないでいる。
この事から、幾らお金があったとしても、技術がなければ生活を変える事はできないと身を持って実感した。
⇒発展途上国の問題を解決するには、様々な方法があるが改めて、技術によるアプローチの重要性を再確認した。

難しさ:
上記で述べた可能性と同時に、難しさも垣間見えた。それは、やはり本当に貧しい人々(ラストマイル)に技術を提供する事の難しさだった。ラストマイルに位置している人々は貧しく権力がない為、中々そのような技術にアクセスする事ができないでいる。

【このような考えに至った原体験】
私が滞在していたホストファミリーの家は広大な敷地を有しており、ここでいつも寝泊まりしていた私にとってこの環境が村の標準であると錯覚していた。ある時、村のエイズ患者を訪問した時(西ケニアにおけるエイズの状況)に、本当のラストマイルに位置している人々に出会った。私が今まで村での生活で当たり前だと思っていた事さえ、彼ら彼女らはそれをできない環境に陥っている事を知った。それは、毎日灯油ランプを使う事ができず、夕食を食べる事ができず、無料である初等教育に子どもを通わす事ができないでいるという状況であった。
ライトがない事は非常に大きな問題であるが、このような状況では様々な問題が山積みであり、最も根本的な問題はお金がない事に行きつく。結果的に、ラストマイルの人々はこのような革新的な技術にアクセスする事を困難にしている。



では、なぜお金がないのか?
それは、満足なお金を生み出す収入源(仕事)がないからである。当然村には会社はなく、一部(先生etc)を除いて雇用はない。結果、自分でビジネスを始めるケースが普通である。しかしながら、問題はビジネスを始める際に資金が非常に限られていて、できるビジネスは限られており、そしてとても競合が多いという状況である。村でのビジネスの種類はこのエントリー(炭ビジネスが与える影響)で述べているが、多くの人々は農業、品物を卸売りするリテールビジネスに従事している。しかしながら、ローカルなマーケットに行くと、例えば50人中15人ほどの人々がトマトを売っているという状況である。供給量に対して、どれほどのニーズがあるかは分からないがが、話を聞く限りビジネスとして儲かっていない事が分かった。

そこで、適正技術は4つに分類する事ができる(ビジネスサイドからの適正技術)、中でも特にお金を生み出す技術に興味を持つようになった。それは、この技術がラストマイルに位置している人々の収入を上げる可能性があるからである。

3.2 炭プロジェクト 201012- 20113
この時期、導入されたソーラーランタンに初期不良が見つかり、多くのランタンが機能しないというトラブルに見舞われた。その結果、ソーラーランタンの調査ができないでいた。
そこで、上記の貧困の問題、中村俊裕氏の助言もあり、始めたのが農業廃材から炭を作るプロジェクトであった。
似たような技術、プロダクトは練炭という名で過去の日本にあり、途上国での生産方式もMITD-Labで開発されていた。始めようとした当初は、既にMITで生産技術が確立されており直ぐに結果がでると思っていが、それが困難である事はパイロットプロジェクトを回してみて直ぐに分かった。詳しい活動内容はこのエントリー(Charcoal projectの振り返り①)に譲るとしてここでは、どのような問題に直面したかを書く事にする。


パイロットプロジェクトで見えてきた問題
- 参加者のモチベーション(12)
まずは、どのような問題があるのかを顕在化させる為に、ホストファミリーの周りに住んでいる比較的貧しい3つの家族にこの炭プロジェクトがどれだけポテンシャルあるのかを説明して、参画してもらう事にした。その結果、一部の家族は途中でドロップアウトしてしまうという結果になった。どんなに魅力的なプロジェクトであったとしても、こちら側が一方的に押し付けるのではなく、主体性を持ってこのプロジェクトに本当に興味がある人を巻き込む必要があると感じた。

- 農業廃材の確保(13)
この問題は直ぐに顕在化した。プロジェクトが本格的に動き出した1月は乾季の真っただ中で農業廃材を手に入れるのが難しいというフィードバックをもらった。これは予期していない問題であり、驚きであった。西ケニアの私が滞在している村にはトウモロコシ、さとうきび畑がそこら中にあり、廃材を確保するのは簡単な事だと思っていたからである。

詳しく話しを聞き分析してみると、農業廃材は季節、畑までの距離等により入手難易度が変わってくる事が分かっ(炭作りのコツ)。収入を安定的に得る事が目的である為、原材料である廃材をどの時期でも安定確保しなければいけない。それには季節関係なく廃材を入手する事ができるサトウキビの廃材が適切であった。そこで、サトウキビから砂糖を製糖している会社に着目し、私たちのプロジェクトに廃材提供するベネフィットを訴求した結果、廃材を無償で提供して頂く事に成功した。

- 初期投資の問題(3)
最終月の3月に炭の生産者を増やすべく、炭の作り方を農民に教えるワークショップを開催した。ここで問題となったのが、初期投資であった。生産者が増えるという事は炭を作る為の道具がいるという事になり、その分の資金(初期投資)が必要になるという事である。私がターゲットにしている人々は村の中でも貧困層に位置している人々であり、そのような資金はなかった。

この出来事から今まで適正技術の中でもお金を生み出す技術に興味があったが、それでもなお資金がない事からその技術にアクセスするのが困難であるという問題に直面した。

この問題を解決するべく、ドラム缶のリースを行った。私が半年後に戻ってくる頃には炭でその分の収入を稼ぐ事ができていると予測からである。また、この経験から炭のプロジェクトに限らず、どのようにお金を生み出す適正技術を初期コストという壁を乗り越えて持続的に普及させられるのか考えるようになった。一つの糸口としてはKopernikKivaのビジネスモデルを組み合わせたローンモデルが貢献するのでは考えた。

そして、3月12日ケニア出国の日を迎えた。

ケニア帰国直後の私が感じた問題意識とそれへの解決の手段については下記のエントリーより。
どのように貧困から抜け出すのか?①



4. デルフト工科大学(TU Delft)への訪問 20113月中旬
ケニアの半年間の滞在後は、オランダ経由して帰国する事になっていた。それは、オランダのデルフト工科大学に訪問して、近い将来私が留学するであろう場所を直接目で見て、適正技術に関連する教授陣と私がケニアで感じた疑問点をディスカッションするとともにコネを作る目的があったからだ。

1週間のオランダ滞在では、まずデルフト工科大学の環境の素晴らしさに感動した。
まずは国籍の多さ。Couch Surfing を通じて、宿泊場所を提供してくれるデルフト工科大学の学生と出会う事になったのだが、彼を通じて様々な国籍の学生と出会う機会ができた。日本ではこんな環境はあり得ないので、非常に興奮した。



私が宿泊した学生寮

また、デルフトの街並み、キャンパス自体も非常に洗礼されていて、衝撃的だった。さすが建築、デザインに定評のあるオランダである。こんな所で学生生活を過ごせたらと妄想の連続であった。




適正技術に関連する教授陣、学生と議論を重ねる事により、どのようなプロセスで適正技術が生まれていくのかが分かった。その多くは学生がチームを組んでプロジェクトベースで進む。それは学生が自らの問題意識で始まるものもあったり、他の団体との共同プロジェクトであったりするする。ここから生まれたプロダクトはLifeStrawMoonLight等である。さて、アフリカでのプロジェクトを行っている学生と議論を重ねると、意外にもアフリカでの経験がない事が分かり、これは自分の強みであると自身につながった。

以上の経験からますます、留学への想いは募るばかりであった。

-------------------
最後に私がこの半年間でどのように変わったのか一目で分かる写真があるので
ここで紹介する。



半年のケニア滞在での一番の収穫は自信であった。最初の数カ月は英語での会話、下痢、金銭トラブル等で苦しかったが、同時にここでしか得る事のできない貴重な体験ができた。この経験で間違いなく、私の人生に大きな影響を与えた出来事の一つであった。


【まとめ】
- ソーラーランタンの調査
適正技術の中でもお金を生み出す技術に興味を持つようになる。

- 炭プロジェクトのパイロット
初期投資をクリアする為のローンモデルの必要性を実感。

- デルフト工科大学訪問
留学して、お金を生み出す技術をデザイン・開発・ビジネスモデルの構築をする事により一層興味を持つようになる。

次回に続く。

0 件のコメント:

コメントを投稿