2012年5月20日日曜日

Charcoal project in Nepal



                


 (English material was updated at the bottom of this page) 

タクローです。
ゴールデンウィークに炭プロジェクトの一環で4日間ネパールに行ってきたので、今回はそのアップデートをしたいと思います。(ネパールにはPCの電源ケーブルを忘れた為、アップする時期が遅れました)

1.   背景
そもそも、なぜネパールなのか?この問いに答えるには、ケニアにおける炭プロジェクトの状況を少し説明しなければなりません。2回のケニアでの活動(トータルで半年間)ではMIT D-Labの技術を用いて、農業廃材から炭を大量生産する為のサプライチェーンの構築を試みました。


                                   MIT D-Labで開発された従来の生産方法

しかし、この技術はケニアの現場に上手くフィットしない事が分かった為(詳しくはこちらから)2回目のケニア2ヶ月間の滞在では、生産技術の改良(ローカライゼーション)に取り組みました。
しかし、2ヶ月間の試行錯誤もってしてでも、生産プロセスの中の材料であるキャッサバ(バインダー)に代わる手段を発見・開発する事は出来ませんでした。
その後、東工大の国際開発サークルで仲間と一緒に炭のプロジェクトを推し進める事にしました。幸運な事に、その開発サークルの初期メンバーの一人がネパールを訪れた際に、農業廃材から炭を作る技術がそこではビジネスとして上手く回っているという情報を入手してくれました。

ネパールの現地で取ってくれた写真
首都のスーパーマーケットで炭が売られています。

そこで、ゴールデンウィークにネパールではどのように炭のサプライチェーンが構築されているのか(特にバインダーは何を使っているのか) を実際の目で確かめる為に、ネパールに行く事にしました。

2.   目的
炭技術をケニアに応用する為、ネパールで炭技術のイロハを学ぶ。

- バインダーは何を使っているのかを確かめる。
- プロジェクトを持続可能にするにはどうすれば良いのかを確かめる。

3.   発見
上記の目的を達成する為、私はネパールで炭を長年研究している Dr. Ramesh氏とお会いして、色々とお話をする事にしました。前もってメールで、Ramesh氏がJICAのプロジェクトでルワンダでも炭技術の普及、所謂南南協力していた事が分かっていたので、ネパールの技術がアフリカにも応用できるかを確かめる上でもどうしても会わなければならない人でした。

そして、ネパール初日から、初日からお会いして、色々な質問をぶつけて、下記の4つの大きな気付きを得る事ができました。

(1)   バインダー
炭の生産において何をバインダーとして使っているかが最も知りたかった事です。
結論を言うと、粘土を使うとの事でした。これはNAST(Nepal Academy of Science and Technology) での長年の研究で粘土がベストであると実証されています。

これは自分にとって驚きでした。なぜなら、ケニアでキャッサバの代替手段として、粘土を使って実験したからです。それも可能な限り粘土の割合を減らすように努力して。
しかしながら、結果は着火せず失敗という形に終わりました

この原因を探すべく、話を聞いていると、どうやら炭と粘土の配合率がとても重要であると分かりました。NASTでの研究の結果、以下の配合率が良いという結果になったそうです。

粘土:炭 1 : 3 (重量比)
粘土:炭 1 : 9 (体積比)

粘土にも様々な種類があり、より詳細な割合は自分で調整する必要あり。

ケニアでは可能な限り粘土の割合を減らしたつもりでしたが、上記のように定量的に実験をしていなかった為、もしかしたらより粘土の割合を減らす事も可能かもしれません。

以上より、改めて実験をする必要があります。

(2)   炭化方法
これは話を聞いている時に得た発見です。
ケニアでは、このプロセスでドラム缶を最初に使用していたのですが、価格が村人の平均月収とほぼ同じであった為、普及するのは難しいと考えました。そこで、現場のリソースを用いる事によりドラム缶を代替する事にしました。それが、レンガによる釜戸と水瓶でした。(釜戸の作成方法に関してはこちらから

                              左から時計回りに、ドラム缶、釜戸、水瓶


さて、ネパールではどうでしょうか?
ネパールでは、数種類の方法が開発されましたが、最も安価な方法として、地面を掘ってそこに農業廃材を入れて蓋をして炭化する方法を取っていました。この方法は、木炭を作る製法と同じです。実は、この方法は考えていましたが、農業廃材は木材と違って、炭化するとアッシュになってしまう為、この方法で炭化すると土と混ざって分離する可能性がありました。その為、この方法を除外していましたが、上記のようにバインダーで粘土を使うなら、炭化の段階で多少混ざってもNo problemDr. Rameshに指摘され、その通りだと思いました。

という事で、この方法が考えられる最も安価な炭の生産方法となります。次回ケニアに行った際は、この方法で炭の普及活動を行いたいと思います。


                 



















穴を掘って農業廃材を炭化中。


(3)   コンプレッサー
材料を安定供給でき、炭化する方法も確立できたとします。次にボトルネックなのが、炭を固める段階(コンプレッサー)です。何がボトルネックかというと、非常に効率が悪いという点です。これは、コストとのトレードオフである為、導入段階としては仕方がないと思います。
さて、ネパールでは、どのような方法で炭を固めているのでしょうか? ネパールでは、コストよりも効率性を重視して、以下のような物を開発しています。










コンプレッサー
 ネパールでは冬に炭は暖炉として使用するので、サイズが大きく、火力を強くする為に、酸素の供給口がたくさんあります。









これは、こちらの方が高効率で、且サイズが大きい為、一つ当たりの利益が大きい事から、より村人のモチベーションを高める事が可能だからそうです。しかしながら、当然コストが高くなる為、村人は購入する事はできません。そこで、次の組織運営が重要になってきます。

(4) 組織運営
どのプロジェクトでもそうですが、プロジェクトが上手く回る為には、熱いパッションを持ったリーダーがいなければなりません。ケニアの例では、一時は私がリーダーになって本格的にコミットすると真剣に考えた時期もありました。しかし、やはり現地の人がリーダーシップを持って運営するのが一番だと思い、今はサポーターとしてどのように関われるのかを模索している最中です。

さて、ネパールでは、どのように組織が運営されているのでしょうか?
ここで重要なのが、技術はあるが、どのように人々を巻き込んでいくかです。ここでは、2つの方法があるそうです。

   生産技術の援助
援助機関をバックに付け、炭の生産技術をただで渡すパターン。

   起業家の発見
資金を持っている地元の起業家候補を探し、彼に炭のビジネスを興してもらうパターン。

どちらのアプローチもありますが、個人的には後者のアプローチの方が魅力的です。国が変わるには、やはり内からリーダーが変えていかなければならず、いつまでも他国に頼っていては持続的ではないと思っているからです。また、炭を大量生産するには、かなりの額の初期投資が必要となるので、誰かがリーダーシップを発揮して、リスクをとってやらなければならず、それは前者では難しいと思います。実際に、ネパールで起業家が初期投資して炭のビジネスを立ち上げ、それが上手く回っているようです。

ですので、今後ケニアでは、炭のサプライチェーンを構築すると共に、起業家を発見していく事に重点を置きたいと思います。

English material is from here.

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